罪名:傷害致死 T被告人:男性(30代) 職業:アルバイト
切なく悲しい「家族とは」と考えさせられる事件です。
犯行時について詳細に語られるので、読み進める人は注意してね。
今回は被告人自身が事件を語ります。
被告人質問 弁護側
弁護士: 昨年4月に仕事を辞めたお父さんを見て、認知症を疑いましたね?
T被告人: 疑ったけど信じられなかった。早すぎると思いました。
弁護士: 「日課」はなぜ始めたんですか?
T被告人: 認知症の進行を遅らせようとしました。
弁護士: 昨年5月からの進行具合は。
T被告人:5月ごろ、職場をクビになった時進んだと思いました。進行の速度が早かった。
弁護士:5月にあなたは仕事をしていましたか?
T被告人:職場が倒産して仕事がなかった時期です。
弁護士:7月からの新しい仕事の給料はどれくらいですか?
T被告人:手取りで15万くらいです。食費を家に入れていました。
弁護士:お母さんとあなたの給料で生活していたということ?
T被告人:はい。
弁護士:借金はありましたか?
T被告人:自分はありませんが父はあったようです。
弁護士:お父さんが「日課」を日記にしていましたが、チェックはしていましたか?
T被告人:その日の様子などを見ていました。「日課」をちゃんとやって欲しいと思っていました。
弁護士:進行する認知症をどう思った?
T被告人:頼りになる父が変わっていくのを見るのは辛かった。自分が家族を支えなきゃと思いました。
弁護士:日常的なお世話の負担は?
T被告人:排泄物の処理などは負担になりました。進行に心がついていかなかった。
弁護士:今後どうなると感じていましたか?
T被告人:もっとひどくなると思っていました。負担は増えていくと思ってました。
弁護士:お母さんの様子は?
T被告人:疲れが見えていました。
弁護士:1月2日の暴行はなぜ?
T被告人:日記を見て「日課をやっていない」と。
弁護士:それでどうしました?
T被告人:やっていないのにやったと言った父に暴力を振るいました。背中を殴った。5発ぐらい。60〜70%くらいの力で殴りました。
弁護士:なぜ背中を殴ったんですか?
T被告人:頭や足、手だとさらに認知症がひどくなったり、「日課」ができなくなると思ったので。
弁護士:お父さんが憎かった?それとも仕事のストレスをぶつけた?
T被告人:憎くはなかったです。仕事のストレスもなかった。
弁護士:1月1日の「日課」は?
T被告人:注意だけで終わりました。
弁護士:1月3日の暴行はなぜ?
T被告人:日記を見たら勉強をしていなくて暴力を振るいました。
弁護士:息をしていないのを見た時は?
T被告人:大変だと思って心臓マッサージをしました。
弁護士:お父さんと交流はありましたか?
T被告人:父がガンダムが好きでプラモデルの話をよくしました。
弁護士:お父さんに何を思う?
T被告人:申し訳ないと思います。
弁護士:何故犯行に?
T被告人:自分の話を真剣に聞いてくれなかった。
弁護士:犯行後の家族の反応は?
T被告人:誰も自分を責めませんでした。
弁護士:今後身近な人が認知症になったらどうしますか?
T被告人:第三者に相談したいと思います。自分一人では無理だと分かりました。
急速に認知症が進む父に、息子の気持ちはついていきません。
少しずつ増えていく介護の負担、将来への不安感に徐々に苛立つ息子。
大好きな尊敬する父が病に冒されていく様を見続けるなかで、少しずつ歯車が狂っていきます。
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